ぽんぽんぼん



近過ぎる梶木君との距離が今更ながら恥ずかしい。


バクバクと鳴る心臓の音が可笑しい位速い。



「えっと…」



必死に言葉を紡ぐがそれ以上言葉が続かない。


ゆっくりと近付いてくる梶木君の顔は、熱のせいか頬がほんのりと赤く染まっていて、唇の赤が艶めく。



息が止まりそうになる。



現実逃避的に近付いてくる梶木君の伏せられる睫毛に、あっ、梶木君って睫毛長いなぁ…なんて思っている間に、トンッと唇に温もりが触れる。



ほんの一瞬の事で。


本当に触れたのかもよく分からない。


直ぐに唇から去っていく温もりは、……私の気のせい?



ぺろっと赤い舌で自分の唇を舐める梶木君は余りにも妖艶で。



「僕も男って事」


「…………」



そんな言葉に完全にキャパオーバーの私は呆然と彼を見つめるだけだ。



わ、私……。


今、今、今、……何があった!?



「ベッドに横になっている男に抱きついて来たんだから、森山さんが悪いよね」



ニヤッと片方の口角だけを上げて意地悪に笑う梶木君の顔が目に映る。



「あっ、……だあぁぁぁぁぁぁあ!!」



私、キ、キ、キスしたんだよっ!



大声で叫びながら慌てて梶木君から離れる私に向けられるフッという鼻で笑う声。


その笑いに続けられた言葉はよく聞く言葉の筈なのに、凄く優しく聞こえる。



「煩いよ、森山さん」



煩いよ。


そりゃあ、煩くなるよ。


だって私、……梶木君とキスしちゃったんだもん!


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