ぽんぽんぼん
「だから、雅人はもう元カレだってば。情報が古いよ、お姉ちゃん」
「な、何ですと!」
目を見開いて驚いている私を見て、若干引いた顔をしている海。
いや、だって、元カレって……。
数ヶ月前には雅人って言ってたじゃん。なのに、今は健次ですか……。
海のお付き合いのサイクルが早過ぎる!
早くない!?と突っ込みそうになるのをグッと堪える。
ここでそう問い掛ければ、話の道が逸れて聞きたかった事が聞けなくなるのは間違いない。
と、兎に角だ。今は海の恋愛話も気になるけど、それよりも自分の事を優先で。
「あのさ、じゃあさ、……男の人がキスする時ってどんな時だと思う?」
梶木君を独り占めしたいと思ってから、あのキスは事故みたいなものだと思ってる癖に思いたくなくて。
もしかして、梶木君は私の事を好きだったり……なんて自分に都合の良い妄想をしたりで私の頭は一杯になってる訳だ。
まあ簡単に言えば、痛い奴だ。
だけど痛い奴って分かってるんだけど、それでも誰かにあのキスは事故じゃないって言って欲しいんだと思う。
「欲情した時」
「欲情?」
海の口から迷いもなく出た言葉に首を傾げる。
すると、盛大な溜め息と共に、手に持っていたスプーンで私をビシッと指す。
「例えば目の前に好きな人がいて、可愛いってなってしたくなる。みたいな」
それって、……梶木君が私を可愛いって思ってくれたって事!?
「ほ、本当に!?」
必死にそう聞く私は、本当って言葉が欲しいんだ。