ぽんぽんぼん
それを誤魔化す様に奥歯をグッと噛み締めた。その瞬間、
「しょうがないから夏休みに会ってあげても良いよ」
優しさを含む声音で紡がれたその言葉が頭の中を駆け巡る。
冗談?と思って頭を上げて梶木君の顔を伺うも、冗談を言っている時みたいにニヤついている訳でもない。
「……えっ!?」
余りにも突然の事に息を呑んでそう声を上げるだけしか出来ない。
そんな私の反応が気に食わなかったのか、梶木君は、だから…と唇を尖らせる。
その後に続くのは夢の様な言葉。
「森山さんが馬鹿正直だから、夏休みに会ってあげても良いって言ったんだけど、別に良いのなら」
ふわっとした気持ちで聞いてたけど、これって……。ん?
ダメダメダメ!ちょっと待って!
このままじゃ折角の梶木君に会えるチャンスが無くなっちゃう!
慌てて夢心地から現実へと思考を戻すと、梶木君の着ているTシャツの裾をグイッと引っ張った。
これ以上梶木君に話させない為にもだ。
「会う会う会う!会って!!」
大声で懇願する目を向ける。
必死っていうのは、こういう事を言うんだと思う。
「森山さん、煩いよ」
呆れた様な冷たい目でそう言われたって譲れない。
煩いのだって知ってる。ここが病院って事も。
でもでもでも、
「煩くなるよ!だって梶木君が夏休みに会ってくれるんだもん!」
そう言ってじっと梶木君の目を見つめるが、プイッと顔を逸らされる。