ぽんぽんぼん
「あの美人さん?」
そう。海が言うようにあの美人さんだ。
あの美人さんを見間違う筈がない。
「うん。ちょっと挨拶して来る!」
彼女へと駆け出した私の後ろから海の適当な「いってらさーい」が聞こえるけど、そんな事よりも今はあの美人さんだ。
彼女の側まで行くと足を止め、墓石に水を掛けている彼女に声を掛けた。
「あの!梶木君のお母さん…ですよね?」
「えっ!」
いきなりの私の呼び掛けに、彼女は目を丸くして私の方へと顔を向ける。
その顔は間違いなく梶木君のお母さんで。
梶木君のお見舞いに行った時に会った時と一緒で目を惹く美人さんだ。
驚いた顔も一瞬だけで、私の顔を彼女も覚えてくれていたらしく目が合うとふわっと優しく微笑んでくれる。
「ああ、この間の!颯太の彼女さんよね!」
完全に彼女だと思われてるよ、これ。
「いえ。彼女では……」
「いいから、いいから」
ケラケラと笑いながら私の言葉を切ってしまう彼女。
ああ、彼女否定出来なかった……。
またもや、梶木君のお母さんの雰囲気に呑まれてしまった。
そう思ってガクッと肩を落としていると、彼女の明るい声が掛かる。
「今日はお墓参り?」
「あっ、はい。お父さんが盲腸で入院してたんですけど、無事昨日退院出来たからその報告だって言って、今日皆でお墓参りだ!ってなったんですよ」