ぽんぽんぼん
「違うのよ。本当は昨日だったんだけど、昨日は忙しくてこれなかったから今日なの」
明るく答える彼女にはさっきの切なそうな雰囲気が夢だったんじゃないかと思ってしまう程だ。
「昨日…ですか?」
首を傾げる私に、彼女は一度お墓へと視線を向けた後、
「昨日はね、……」
そう言葉を紡いでいく。
話を聞いている筈なのに、風が身体をすり抜けていくように話が流れていく。
何で、こんな事聞いちゃったんだろ……。
出来るのなら、今聞いた事を聞かなかった事にして欲しい。
いや、……聞く前の私に戻りたい。
今聞いた事が風の様に何処かへ飛んで行ってくれたら良いのに……。
ねえ、梶木君。
私、……梶木君がいつも言うように相当な馬鹿みたいだよ。
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私の目の前にそびえ立つ建物へと目を向けて、足を前へと踏み出す。
足取りははっきり言って重い。
建物に入るのが嫌な訳じゃない。静かな雰囲気にゆっくりとした時間が流れる図書館はどちらかと言えば好きな方だと思う。
図書館に入るのが嫌なんじゃなくて、今日図書館
に来た目的が嫌なんだ。
嫌なのに、本当は知りたくないのに。
それでも、少しの可能性を求めてここにやって来たんだ。
私の考えが間違っているっていう証拠を探しに。
昨日は梶木君のお母さんの話を聞いた後、自分がどう行動したかもいまいち覚えていない。