ぽんぽんぼん



梶木雪さんは5年前に既に亡くなっていて。


それなのに、梶木君はおばあちゃんにぽん菓子を買っていた。


駄菓子屋のおばあちゃんには亡くなっているおばあちゃんが元気だと言って。


梶木君の家にお見舞いに行った時、私にもおばあちゃんは出かけていると答えてた。


梶木君。



貴方は、梶木雪さんが……




自分のおばあちゃんが既に亡くなっている事に気付いていないんじゃないですか?




だから、おばあちゃんのお墓参りに行った事がないんじゃないですか?




梶木君の事を思うだけでも胸が痛くて涙が止まらないのに、更に私の頬を濡らすのは、こんな所で運命の出会いが起きたから。


運命の出会いなんて素敵な言葉じゃないかもしれない。


こんな出会いならしたくなかったとさえ思ってしまう。



止まらない涙で霞む視界で捉えるのは、新聞記事の横に写っている梶木雪さんの顔写真。


皺が少し増えている気もするけれど、迷子になった私に声を掛けてくれた優しいあのおばあちゃんの顔だ。


周りに人がいるのなんて気にしていられない位どんどんと涙が溢れてくる。


パソコンを前にして一人でしゃくり上げなから泣き続ける私は、端からみたら変な人になるんだろう。


それでも、……止まらない。



やっぱり、梶木君のおばあちゃんが私に声を掛けてくれたあのおばあちゃんで。


そのおばあちゃんは5年前に亡くなってて。


梶木君はおばあちゃんが既に亡くなっている事に気付いていなくて。



こんな真実は、……辛いよ。



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