ぽんぽんぼん
『寝ておりました!そして、梶木君の夢を見てました!それにしても、梶木君からラインが始まるなんて初めて!!』
寝てなんていなかった癖に、顔が見えない事を良いことに嘘を吐く。
無駄に文章の中の私はテンションが高い。
『ウザい』
『何で!?』
『明後日の時間とか、またラインするとか言った癖に、今まで一切送って来ないってどういうわけ?森山さんの癖に』
ああ、そういえばそう言ったんだった。
本当にいっぱいいっぱいで、忘れてた。
梶木君と会えるのをあんなにも喜んでいた癖に。
『ゴメン!何かバタバタしてたんです。これが』
バタバタ……。私の気持ちがバタバタしてたんだよ。
『ムカつく』
私が連絡しなかった事がムカつくって事だよね。
梶木君らしいドストレートな言葉。
頬は涙で濡れているのに、今私とラインをしている梶木君は、私の知っている梶木君なんだと思うと頬が緩む。
『もしかして、私からの連絡待ってくれてた…とか?』
『自意識過剰』
『ですよね』
ちょっと調子に乗った言葉を送れば、的確に打ち落とされる。
梶木君だ。
私の知っている梶木君だよ。
知らない梶木君の話ばかりだったから、たったこれだけのやり取りでも凄く安心する。
明後日、私は梶木君と今まで通りに何も知らない様に振る舞えるだろうか。
心にズシッとのし掛かるこの重さは、秘密を胸の内に秘めたまま決して口にしてはいけないという縛りのせい。
梶木君を目の前にしても、決して口にしてはいけない。伝えてはいけない。
伝えてしまったら、……考えるのも怖い。