ぽんぽんぼん
梶木君の秘密を知っていた人達は皆、この心にのし掛かる重さに耐えているんだ。
それが一番梶木君の為だから。いや、梶木君を失いたくない自分の為……。
『まだ決められていないので、もう少し待って貰えますか?』
『早めにね。そうしないと、別の予定入れるから』
『了解致しました!!』
こんな事言いながら連絡が遅くても、きっと梶木君は別の予定なんか入れずにいといてくれるんだろう。
梶木君は口は悪いけど、……凄く温かくて優しい人だって知ってるよ。
ふとスマホから視線を外して部屋の時計に目を向ければ、もう夜の10時を針が指していて。
私が部屋に引きこもって泣き続けていた時間がこんなに長かったなんて気付いていなかった。
もう一度スマホへと視線を戻すと、梶木君への文を作る。
今までこんな文を送った事なんて無いのに、今日は凄く送りたくなったんだ。
『梶木君。お休みなさい』
だったそれだけなのだが、寝る前に誰かにそう告げるのは親しい間柄の人だけな気がして、軽く送れなかった。
『お休み。馬鹿な森山さん』
直ぐに返ってきたその言葉にふわっと胸が温かくなると同時にぶわっとまた涙が溢れ出す。
そのまま手に持っていたスマホを胸に抱き締めた。
梶木君が幸せになれますように……。
そう願わずにはいられない。