ぽんぽんぼん



「急にどうしたの?お姉ちゃん?」



棚へと一直線に向かって進む私へ、ソファーに座ってテレビを見ていた海の不思議そうな声が掛かるが、それに答える時間さえ勿体無いと思う。


棚の前まで行くと、一番上の引き出しの取っ手に手を掛けグイッと引っ張る。


多くの書類の一番上にちょこんと乗っている病院のパンフレット。



「あった」



そう呟くと共にそのパンフレットを手に取った。



「それに何かあるの?」



首を傾げるお母さんが視界にはいるが、口を開いたのはそれに答える為じゃない。



「これ、借りていくね」



それだけ言うと、病院のパンフレットを持って再び自分の部屋へと向かう。


後ろから、


「あっ、ちょっと、泉!」


お母さんの呼び止める声が聞こえたが、それにも振り返らない。


それ程私にとってはこの病院のパンフレットに書かれている事が重要なんだ。


部屋に入ると左手でドアを閉め、その場に座り込む。


視線の先は手に握られたパンフレットで。


ドキドキと大きな音をたてて鳴り響く心臓はこのパンフレットの中を今から見るという緊張感から来ているんだろう。


ゆっくりと最初のページを捲る。


病院内のご案内と書かれたページ。



このページじゃない。



次のページを捲る。その指が僅かに震えているのは本当の真実を知る事を心の何処かで怖いと思っているからかもしれない。


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