ぽんぽんぼん



「それより行きましょうか!ビッグパフェ屋さん!」



梶木君の手を取ると強引に引っ張って歩き出す。


馬鹿な私はこうやってしか誤魔化せないんだ。


梶木君の手を引いた事でグッと近付いた距離のせいか、ふわっと大好きな匂いが鼻を掠める。


甘くて大好きな匂い。どこか温かくて優しい匂い。


だけど、凄く胸が痛くなる切ない匂い。



目頭が熱くなってきたその時、


「ビッグである必要性が無いんだけど」


私に手を引かれながらズルズルと歩く梶木君のぶっきらぼうなその言葉で、スーッと目頭の熱さが退いていく。


泣いたりするなんて場違い。


今日は、この梶木君との時間を目一杯に楽しむって決めて来たんだから。



梶木君の顔を見るとへらっと笑いながら口を開く。



「まあまあ、今すっごく人気なんですから」


「人気とかどうでも良いよね」



辛辣なお言葉。まさに梶木節だ。



「本当に美味しいってはるるんに聞いたから間違いないよ!」



それでも必死になるのは、梶木君のふわっと笑う顔を見たいからなのかもしれない。


私の必死さが伝わったのか、フッと鼻で笑う彼の目は優しく細められていて。


ふわっと笑った顔じゃないけど、これはこれでいいかと思ってしまう。


多分、私は梶木君の笑った顔なら何でもいいんだろう。


どの笑顔にも胸をギュッて締め付けられるんだから。


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