ぽんぽんぼん
ゆっくりと梶木君の唇が動きを見せるのを真剣に見つめる。
が、彼の口から出てきたのは私が心待ちにしていた言葉なんかじゃなかった。
「まあまあ」
「微妙っ!」
つい突っ込んでしまったが、よく考えれば梶木君が可愛いよ…なんて言ってくれる方があり得ないわけだ。
あり得ない筈なんだけど、少し間を置いて
「まあまあ…可愛いよ。癪だけど」
ガクッと肩を落とす私に降り掛かるその言葉は本物?
俯いていた顔をゆっくりと上げ、梶木君の顔を見れば、頬を赤く染めて私からあからさまに目を逸らしている。
嘘……、なんかじゃないと思っていい?
梶木君が可愛いって言ってくれたって思い込むよ。後から嘘なんて言ったって、無しって言ったって絶対に忘れてあげないよ。
「あ、ありがとう!」
「別に」
ギュウーっと痛くなる胸を空いている手でそっと押さえる。
梶木君とのこの時間がずっと続けば良いのに。
そう思うのは、この時間のタイムリミットが刻一刻と迫っているからなのだろう。
散々迷ってビッグパフェ屋さんに行こうと決めたのは昨日で、『梶木君に10時に駅前で!』と連絡したのも昨日だ。
梶木君から一昨日に早くしてって言われた癖にギリギリの連絡。
当然ながら『遅い!ふざけてんの、森山さん!』
なんて切れ気味の文が送られてきたのだが。
結局こうやって待ち合わせ場所に来てくれて、ビッグパフェ屋さんに一緒に行ってくれる。
梶木君が冷たいのは口だけ。