ぽんぽんぼん
その雰囲気を打ち破る様に先に口を開いたのは、梶木君だ。
「でも、……ムカつくけど、…………ありがとう」
「えっ!?」
突如として言われたその言葉に目を丸くして、膝に顔を埋めている梶木君を見つめた。
梶木君に嫌われるのは分かってた。予想出来てた。
でも、……梶木君にお礼を言われるなんて。
そんなの予想出来るわけない。
梶木君は顔を膝に埋めたまま上げる事はしないけれど、言葉は続く。
ゆっくりと紡がれていく梶木君の声が響いてる。
「森山さんが言わなかったら、誰も僕に言わなかったと思う」
「うん」
「最初は本当にばあちゃんが生きてるって思い込んでたんだ。辻褄の合わない事があっても、無理矢理辻褄を合わせて、ばあちゃんは生きてるって思い込んでた」
大好きな人が亡くなっても、それを信じたくないって気持ちは誰にでもあると思う。
夢だったって思い込もうとしてしまうのも頷ける。
「でも、高校に入った時辺りからその辻褄合わせも限界が来ていたんだと思う。そんな時に、ばあちゃんの部屋の箪笥にばあちゃんの遺影が入ってたんだ。
見付けた時には、暫くその場から動けなかったよ」
「それで……」
それで梶木君は、現実を見たんだ。
だから梶木君はおばあちゃんが亡くなっているって気付いていたんだ。