ぽんぽんぼん



そりゃあ、梶木君からしたら不思議なんだろう。


梶木君は、私と梶木君のおばあちゃんが出会っていた事を知らないから。


そういう私も、あのおばあちゃんが梶木君のおばあちゃんだったと分かったのは一昨日に確認した新聞記事で…なのだが。



「私ね、梶木君のおばあちゃんと昔会った事があるの。私が5歳の時に、夏祭りで迷子になってた私に声を掛けてくれたんだよ。

その時にね。お母さんと会えた後に、優しかった梶木君のおばあちゃんと離れるのが急に寂しくなって泣き出した私に『魔法の言葉』だって教えてくれたの」



「な…、何だよ……、それ」



頭を抱えてそう言う梶木君の声は掠れていて。


今にも梶木君が消えてしまいそう。


そんな彼に向かって不意にゆっくりと右手を伸ばすと、彼の頭をそっと撫でた。


俯いたまま肩を僅かに揺らしている梶木君を見ていたら、勝手に身体が動いてた。


振り払われるんじゃないかと思っていたのに、その手が振り払われる事は無く、梶木君の頭を撫で続ける私の手。



少しでも、梶木君の心が軽くなります様に。



梶木君に真実をぶつけた私が言える立場では無いなんて分かってるけど。


それでもそう願わずにはいられない。



暫くそうしていた後に梶木君の身体と頭が私の方へとストンと倒れてきた。


と、同時に発せられたその言葉。



「森山さんって、…………ほんとムカつくよ」


「うん」



私の胸に俯いたまま頭だけを当てている梶木君の肩はさっきよりも大きく揺れていて。


泣いているんだと思う。


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