ぽんぽんぼん



なのに、静かなのは声を押し殺して泣いてるんだろう。


いつも酷い言葉を吐いてくる彼が、たまに優しい行動をとる彼が、凄く繊細な心を持つ彼が。


今、泣いている。


こんな時でさえ私に泣いている姿を見せたくないから、梶木君は私の胸に顔を押し当てているんだと思う。


男の意地というやつ…だろうか。


それとも、私に心配を掛けたくないと思ったからかもしれない。


梶木君は、優しい人だから。



右手で彼の頭を優しく撫で続ける。


静かなこの場所に響くのは、チョロチョロと流れている水の音と、風によって木々が揺れる音。


それと、梶木君の声を押し殺していても口から漏れる小さな小さな泣き声。





今日という日が、梶木君が一歩を踏み出す為の何かになれるますように。





ーーーーー……………


夏祭りで賑わう人達を前に、おばあちゃんから貰ったぽん菓子を頬張る。


ふと、


「おばあちゃんは、優しいね」


そう口にすると、目の前にいるおばあちゃんがふふっと笑う。



「ぽん菓子の匂いがする人は皆、優しくて良い人なのさ」



おばあちゃんが優しく微笑んでそう言うのだから、そういう事なんだろう。



暫くおばあちゃんと一緒にその場に屈み込みながらぽん菓子を食べていると、


「いずみー!!」


大声で呼ばれている私の名前が耳に届いた。



「おかあさん!!」



その場から立ち上がった瞬間に、視界に映るお母さんの姿。


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