ぽんぽんぼん
「で、何?」
結局の所、彼女は何で僕を引き留めたかの理由が見当も付かない。
冷たくそう言い放つと、忘れていた事を思い出した様にハッ!っと声をあげる彼女は正に間抜け面というやつだ。
「あのですね!梶木君は香水とかつけてたりしますか?」
「香水?つけてないけど?」
何で急に香水?
僕から変な匂いでもしてたのか?
もしそうだったとしたら、彼女が僕の名前を聞いてくるのは可笑しい気もするけど。
彼女の質問の意図が掴めず首を傾げる。
が、そんな僕の姿は彼女の目には映っていなかったらしい。
「ああっ!私、最高についてる!」
そう言いながら顔を上に向けて、右手でガッツポーズをとっている彼女。
ああ、この人は。…………完全に変人だ。
「だから、何なの?」
僕の中で変人認定が下りた彼女に口調が更に冷たくなるのは当然の事で。
相手は女子なのだが、思わず睨み付けてしまったのも仕方ない事だ。
しかし、彼女はそんな僕の視線すらも気にならないらしい。
へらへらと笑ったまま、睨まれている筈の僕の目を真っ直ぐと見つめてくる。
彼女の目は澄んでいて、何だか見たくないものを見ている様で、僕の方からスッと目を逸らせてしまった。
これが勝負とかだったら、完全に僕の負けだ。
そう思った瞬間、
「梶木君からふんわり香る匂いが大好きです!堪らないです、その匂い!」
目の前で鼻息荒く興奮気味にそう言い切る彼女から、距離をとろうと後ろに一歩下がる。
彼女の近くは危険という信号が身体を駆け巡ったんだ。