ぽんぽんぼん
「に、…匂い!?」
「そうなの。鼻を擦り付けたいくらいだよ!」
「えっ!」
鼻を擦り付けたい!なんて女子にあるまじき発言。
彼女は変人だ。……そして、変態だ!
また何かを思い出したのか彼女が「あっ!」と声をあげる。
それに続いたのは、また訳の分からない質問だ。
「そのー。梶木君は、そのー、彼女さんとか居たりしますか?」
「えっ!……居ないけど」
僕に彼女が居ないっていう事が、目の前の彼女に何の関わりがあるというのだろう。
ハッキリ言って、関係ない。
関係ない筈なのに、
「本当に!」
そう嬉しそうにニコッと微笑む彼女に目を奪われる。
彼女の行動は明らかに僕を苛立たすのに、彼女から香る匂いは僕を落ち着かせる。
そして、彼女の笑顔は僕の目を惹き付ける。
そんな訳の分からない自分の気持ちも気持ち悪くて、口を出た言葉は酷く苛ついて冷たいもの。
「だったら、何なの?」
その僕の声に隣にいる山田が肩をビクッと揺らす。
でも、彼女は変わらない。
「だったら遠慮無く!」
その言葉を合図に両手を広げて僕に向かってくる彼女。
その姿を視界に捉えた瞬間、ドスッと胸の辺りにやってくる衝撃に、グラッと足がよろめいた。
グッと足を踏み込み、何とか態勢を持ちこたえたのだが。衝撃を受けた胸へと視線を落とすと、
「な、なななな何してんの!?」
驚きと混乱で声が上擦るという始末。
それもこれも、全部彼女のせい。
僕の胸に顔を埋めて息を吸い込んでいる彼女は、変態以外の何でもない。