ぽんぽんぼん
お祭りに行くとたまに見掛ける、ぽん菓子。
甘くて美味しい、でもどこか昔の懐かしい味。
このぽん菓子、私の大好物だったりする訳で
。
鼻腔を擽るこの何とも言えない甘い香りが大好きなんだ。
朝の教室でドアへと顔を向けて、今日も今日とてこの香りがする彼を待ちわびる。
「泉、ドア見すぎ」
私の前の席の椅子を後ろに向けて座り、私の机に頬杖をついてそう溜め息混じりに言ってくる可愛い少女。中学から仲の良い友達の杉浦遥ちゃんだ。
通称、はるるんである。
「心待ちにしてるからね!」
グッと親指を突き出す私にはるるんは、可愛い顔にも関わらず眉間に皺を寄せる。
「何故に、アイツな訳?いっつも仏頂面で可愛さの欠片も無い様な奴よ」
「えぇぇぇえ!そんな事無いよ!甘いよ、梶木君!」
私が心待ちにしている梶木君は確かにはるるんが言うように仏頂面が多い…と思う。
でも、そんな事よりも何よりもすっごく甘いんだ彼は。
「甘いって……、匂いがでしょうよ」
「うん、そう。凄く甘くて美味しそうな匂いさせてるよ」
もう、直ぐに食べたくなっちゃう様な匂い。
あの匂いは羨ましい限りだよ。
「柔軟剤とかじゃないの?」
「違うんだよね、あれは」
若干どうでもよさそうにそう聞いてくるはるるん。はるるんはあの匂いが好きでは無いらしいから、梶木君の甘さが分からないらしい。
勿体ない。