ぽんぽんぼん



「梶木君の匂いを堪能させて頂いてます!」


「や、止めて貰える、この変態!」



そう叫んで彼女の頭を引っ付かんで剥がしたのだが。


彼女の行動はその日から毎日繰り返される事になった訳だ。



ほんと、呆れる程の精神力。



そう思う。


それからだったと思う。ばあちゃんに、今日も会っていない。と真剣に考え始めたのは。


森山さんが変態行動を起こすと共に、彼女の香りが僕を落ち着かせる。


と、同時にばあちゃんを思い出すんだ。


そうなったら、後は崩れていくのは早かったと思う。


段々と増えていくばあちゃんの疑問点。


森山さんと会うまでは目を背けて、勝手な辻褄合わせを繰り返していたのに、それがもう出来なくなっていたんだ。


徐々にヒビが入って壊れた。


無理矢理作ったものは、いつかは必ず壊れるものなのかもしれない。


崩壊するのは見えていたのかもしれない。


それでも自分の思い込みに気付いた時、……愕然とした。


でも、もう戻れなかったんだ。


母さんが、ばあちゃんが生きていると思い込んでいる僕の状態を悲しんでいたのにも気付いた。


仕事か忙しくて余り会わないけれど、父さんだって悩んでいるのにも。


駄菓子屋の菊さんが心配してくれてるのも。


僕の思い込みが、周りにどんな影響を及ぼしているかという事にもやっと気付いた。


それでも、何と言い出せばいいか分からなかった。


それに、僕がばあちゃんが亡くなっている事を認めてしまったら、皆、ばあちゃんの事を忘れていく気がしたんだ。


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