ぽんぽんぼん
僅かに震えている自分の右手を左手で押さえながら、たとう紙の紐をほどいていく。
たとう紙の中に納められていたのは、ばあちゃんの留め袖だ。
ばあちゃんが、颯太の結婚式にはこれを着なきゃね。と言ってこの留め袖を閉まっていたのが懐かしい。
折り畳まれている留め袖の袖の部分へ、そっと右手を差し入れると、指にぶつかる固いもの。
その固いものを掴むとスッと袖から抜き出した。
ああ、この写真をじっくり見るのは2度目だ。
顔に皺を一杯にして、にっこりとこっちに向かって微笑みかけてくれているばあちゃんの写真。
母さんが、ばあちゃんが生きていると思い込んでいる僕に見せない様に隠していた遺影だ。
前見た時は、そのまま元に戻して見なかった事にしてしまった。
でも、……今日は違う。
このばあちゃんの遺影を仏壇の横にあるじいちゃんの遺影の横に置くんだ。
じいちゃんは僕が産まれて直ぐに病気で亡くなっているらしくて、僕にじいちゃんの記憶はない。
じいちゃんの事といえば、仏壇の横に置かれているじいちゃんの遺影をばあちゃんと一緒に拝んでいたという事くらいだ。
だから、母さんはじいちゃんの遺影は隠さなかったんだと思う。
じいちゃんの遺影が置かれている前まで来ると、腰を下ろす。
そして、両手で大事に持っていたばあちゃんの遺影をそっとじいちゃんの遺影の横に置いた。
写真の中のばあちゃんは、さっきと変わらず笑っている。
この写真、……撮ったのは僕だ。