ぽんぽんぼん



カメラを持って遊んでいた時に、ばあちゃんの部屋に来たんだ。


僕が「ばあちゃん、笑って!」と声を掛ければ、


「ん?写真かい?」


そう言いながらニコッと笑ってくれた。


この写真には写っていないけど、その時のばあちゃんの手にはぽん菓子が握られていて。


僕が来るまで、大好きなぽん菓子を食べていたんだろう。



思い出す思い出に視界が霞む。



ばあちゃん、……ごめん。


ばあちゃんのこんなに綺麗に笑った顔の写真を、ずっと箪笥の奥に隠していて、ごめん。


ばあちゃんはじいちゃんが大好きだったっていつも言ってたのに、じいちゃんの隣にいさせてあげられなくて、ごめん。


じいちゃんもばあちゃんの綺麗に笑った顔を今日まで見せてあげられなくて、ごめん。



ほんと、……ばあちゃん。




ごめん。




何度謝ったって足りないと思う。


これからは、ちゃんと毎日拝むから。


これからは、ちゃんと現実を見て前に進むから。



二人の遺影の前でそっと両手を合わせて目を閉じる。


閉じた目尻から、ツーと頬を伝って流れていく涙がポタポタと膝の上へと落ちていく。


泣かないよ。そんなばあちゃんの声が聞こえて来そうだ。



ごめんよ、……ばあちゃん。泣くのはさ、……今日だけは許して欲しい。


そしたら、もう泣かないから。


そしたら、笑うから。笑った顔を見せるからさ。


ばあちゃん。


ばあちゃん、…あのさ。


5年前、僕を助けてくれて、……ありがとう。



< 203 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop