ぽんぽんぼん



その時、ガラッという音と共に教室のドアが開いた。


それを反射的に見てしまったのは、いつもの癖。



「あっ!」



思わずそう声を上げたのは、教室に入って来たのが梶木君だったからだ。


今日も変わらず怠そうにしている。



「噂をすればなんとやら」



はるるんの口からその言葉が出ると同時に、梶木君から目を逸らす為に机へ顔を突っ伏せる。



「行かないの?」


「や、……止めとく」



顔を上げずにそんな返事をする私を、きっとはるるんは怪訝そうな顔で見ているのだろう。



「へー、珍しい」



はるるんのその言葉が胸に刺さる。



ほんと、珍しい。私が、梶木君に抱き着きに行かないなんて。


実は今も行きたくて、うずうずしてる。


でも、……ダメなんだ。


梶木君を嫌な気持ちにさせるから。


いや、そんなのは建前で。本音は、……梶木君に私を嫌いだとひしひしと伝わって来るであろう目を向けられるのが、耐えられないんだ。


……怖いんだ。


顔を上げて彼の顔を見つめる事すら、怖いんだ。


そんな目を向けられて当然の事をした癖に。


本当、……私って馬鹿だ。



グッと歯を噛み締めたその時、再びはるるんの声が降ってくる。



「へー、珍しいものって重なるものね」



重なる?


私はさっきはるるんに『珍しい』と言われてから特に何もしていないし。


どういう意味だろう?


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