ぽんぽんぼん
「えっ、何で?」
突然の事に驚いて声を上げると、首を傾げられる。
「帰るんでしょ?」
「あっ、そうだった」
そういえば、帰るから鞄を取りに教室まで来たんだった。
教室に梶木君がいたから、すっかり当初の目的を忘れてた。
はるるんも、下駄箱で待たせちゃってるよ!
「森山さんって馬鹿過ぎだよね」
「梶木君はなかなか失礼ですが」
慌て出した私に溜め息混じりでそう言われれば、胸のドキドキもへったくれもなく、自然と口が動いていた。
こういう会話が私と梶木君らしいのかもしれない。
「帰りは一人なの?」
「ううん。はるるんが一緒!待っててくれたんだよ。持つべきものは友達だね!」
「そっか。良かったね」
淡々とした口調でそう言うからか、梶木君が本当に良かったねと思っている気がしないのは、私だけなのだろうか。
一応「うん」と答えるも、その答えにも彼の反応は全く無い。
が、ふわっとした甘い香りが鼻腔を擽ると共に耳を掠めた梶木君の呟き。
「僕はいらなかったわけだ」
「えっ!?」
その呟きに目を丸くさせて驚く私に、いつもの様な蔑んだ目を向けてくる梶木君。
「別に何でも無いよ。何かあったとしても馬鹿な森山さんには関係の無い事だよ」
何だか訳が分からないが、これだけは分かる。
間違いなく、私は馬鹿にされている!
「どれだけ馬鹿に……」
頬をぷうっと膨らませてぶつぶつ文句を言う私を見て、梶木君が思わずという感じでクスッと笑う。