ぽんぽんぼん



その笑い顔はやっぱり優しくて、文句を言っていた口も止まってしまった。



「早く行かなきゃ杉浦さんが心配するんじゃない?」


「あっ、そうだよ!」



梶木君からそう声を掛けられて、今更ながらハッとする。


教室の時計に目をやれば、もうかなり時間が経っている。



はるるん、怒ってるかも!



「じゃあ、また、明日ね梶木君!」



手を振り彼に背を向けた時、


「気をつけて」


消え入りそうな位小さな声でそう聞こえてきたのは聞き間違えじゃないと思う。



なんたかんだで梶木君は口は悪いけど、いや悪過ぎるけど、私を保健室まで運んでくれた訳で。


根は優しい人なんだと思う。


きっとその時の梶木君の匂いで、あんな懐かしい夢を見たんだ。


私が5歳の時に迷子になった時の夢を。





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