ぽんぽんぼん
「あー、でもでも、やっぱり要らない!」
名残惜しいが再び梶木君のハンカチをグイッと彼の目の前に差し出した。
「何、僕から物を貰うなんて出来ないとか言う訳?森山さんの癖に」
ギロッと鋭い視線を寄越して、不満そうにそう言ってくる梶木君。
最後の台詞が結構酷いが、あげると言われた物を要らないという私も非常識だって事も分かっている。
でも、今日の優しい梶木君なら私の願いを聞いてくれるかも!なんて思ってしまったんだ。
貰いたく無いって理由じゃなくて、
「そうじゃなくって、匂いが……」
「匂い?」
私の言葉に梶木君は不思議そうな顔をして首を傾げる。
その雰囲気がやっぱりいつもより優しく感じる。
「梶木君の甘い匂いが、家で洗濯すると無くなっちゃうんだよー」
「それ、当たり前だよね」
呆れた声を出す彼は、明らかに馬鹿にしている目を私に向けてくるのだが。
馬鹿にされたって良いんだ。
この願いが叶うなら!
「だから、貰うよりも毎日貸して欲しい!そして毎日梶木君の匂いを堪能したい!」
思い切って言葉にした私の願い。
が、その願いはあっさりと切り捨てられた。
「変態」
その言葉と共にやって来た蔑む視線によって。
「変態じゃないです!」
そう突っ込んだ瞬間、私の差し出していた手からハンカチを取ろうとする。