ぽんぽんぼん



「ほんと、森山さんって馬鹿だね」


突如として彼から放たれたその言葉に、もしや言葉の裏に隠された本当の気持ちがあるとか?という考えがむくむくと湧き出て、彼へと顔を近付け口を開く。



「誉め言葉!?」


が、そんな考えはあっさりと却下されるのだ。



「貶し言葉」


「酷っ!酷いよ梶木君!」


「うざっ!うざいよ森山さん!」



私の口調を真似てそう言う彼は本当に酷い。甘いけど酷い。



「何ですか、その返しは!?」


「さあ、何でしょう」



私の言葉をものともせずに、机の中を覗く様に確認しながらさらっとそう言われてしまえば、口をへの字に曲げる事位しか出来ない訳だ。



ああ、梶木君ってばこんなに甘い香りを漂わせている癖に、やっぱり冷たい。


まあ、甘い香りがしたから優しい人って判断する私も可笑しいって、はるるんは言ってたけど。


それでもこの鼻腔を擽る香りは途切れる事がないんだ。



「あのー、梶木君」


「何?」



何だかんだで無視をされる事はない訳で、今も私の呼び掛けに目を向けてくれている。


そういう所を見ると、梶木君は優しい人なんじゃないのかな…なんて思ってしまう。


温かい人だって思いたい。



まあそれにしてもだ、梶木君の側にいると、梶木君の胸に顔を当てて思い切り匂いを嗅ぎたい!という衝動が半端なく頭を占めていくのが分かる。


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