ぽんぽんぼん
「ど、どうしよう、梶木君!」
「諦めたら」
「ワーク写させて!この通り!」
兎に角何とかしようと、頭を下げて梶木君に救いを求めてみるも、梶木君が助けてくれる訳もなく。
「嫌だね」
いつも通りそう言葉を吐かれた。
「けち!」
「けちだけど」
唇を尖らせて文句を言っても、梶木君の返しに文句を言っている自分が馬鹿らしく思える。
「こ、こうなったらはるるんに!」
その場から立ち上がってはるるんの席へと身体を向けたその時、ガラッと教室の前のドアが開く音が響いた。
そこから顔を覗かせたのは、今年35歳になる独身もさ男こと、生物の教師の原田だ。
「おー、生物のノート回収に来たぞ!皆出してるか?」
快活なその声音が教室内に響く。
「残念。先生が来たね」
「そ、そんな……」
意地悪な笑みを浮かべている梶木君の隣でガクッと肩を落とす。
もう、手遅れだ。
パラパラとまだ出していなかった生徒が教卓にワークを提出していく。私はそれを見ているだけ。
やってないのに、出せる訳無い。
「よーし、集まったな!じゃあな!」
教卓の上に積み重ねられたワークを両手でひょいと持ち上げると、その言葉を残して去って行く原田先生。
「ああ……」
うるっと視界が霞む中口から漏れ出たその嘆きはとてつもなく弱々しい。