ぽんぽんぼん
「ただの好奇心です。はい。すいません」
即効で謝ると、呆れた様にはぁ…っと溜め息を吐かれる。
「まだ何も言って無いけど」
うん。聞いてない。
でも、
「先手を打ってみました!どう凄いでしょ!?」
ニカッと歯を見せて笑うと、梶木君の眉間の皺が深くなる。
「どうしよう。凄く腹ただしいね」
「酷っ!」
「本音だから、仕方ないよね」
「酷過ぎですよ、梶木君!」
「うざ過ぎですよ、森山さん」
何を言っても私の心をザクザクと刺す言葉を吐いてくる梶木君に、もう私は完敗だ。
めった刺しにされた気分。
心はぼろぼろなのに、鼻に入ってくる彼の匂いはふわっと甘くて落ち着くという仕打ち。
「こ、こんな匂いをさせているのに酷い」
飴と鞭ってこんな感じなのかも。
「匂いは関係無いでしょ。森山さんってほんと馬鹿だよね」
そう言う梶木君にいつも通り突っ込みたい所だが、図書館に来て生物の論文を書かないといけないこの状況の私に突っ込む資格なんて無い。
だって、宿題を忘れてた私は馬鹿なんだもん。
「今回ばかりは自分でも馬鹿だと思う」
溜め息混じりに呟く様にそう言うと、床へと視線を落とした。
「反省してるんだ?」
上から降ってくる言葉はいつもの梶木君という感じだが、その口調は意外にも優しい。