ぽんぽんぼん
だからか、ゆっくりと顔を上げて梶木君の顔を見ると、苦笑いを漏らした。
「一応、私でも反省位はしますよ」
この瞬間、偉いじゃん。なんて言葉が返ってくるかも…と夢を見た私を叱咤したい。
彼は梶木君なのだと。
人を馬鹿にしてフッと鼻で笑うその姿。
そしてその後に続く梶木節。
「反省だけなら猿でも出来るって言うしね」
「ですね」
そう口にするとガクッと肩を落とした。
やっぱり梶木君だ。
一度ふうっと息を吐いて、するすると梶木君の方へと近付いて彼の匂いを吸い込む。
ふわっと甘いその香りが落胆した気持ちを持ち上げると、恐る恐る口を開く。
「あのー、で、梶木君は何で図書館に?」
私の窺う様な視線から目を逸らし、別にと言ってから怠そうに言葉を続ける。
「今年の交通事故による死者数を調べに来ただけだけど」
「何故に!?」
思わず目を見開いて聞いてしまう。
それ位、謎な答えだ。
興味深々に梶木君の答えを待っていると、
「森山さんって、やっぱり馬鹿だよね」
という貶し言葉が降りかかる。
これは聞けないパターンかも。
一瞬そう思ったが、梶木君の声はまだ続きの言葉を紡いでいく。
「社会にとって大きな問題だからね、交通事故は。その対策案なんかや、交通事故を起こした人に関わる法律の改正とか色々あるでしょ」
おおっ!法律とか全然考えた事無かった。
なんていうか……、
「梶木君って、意外に社会や政治の事を考えてるんだね」
「意外にってどういう意味?」
ギロッと睨み付けられる視線が痛い。