ぽんぽんぼん
頭に大きい彼の手が触れたと思った瞬間、ガシッと私の頭を掴む。
と、同時に梶木君の胸から無理矢理引っ張って剥がされる私の頭。
「痛い、痛い、痛い!」
叫んで涙目で訴える。
が、私の頭を剥がす力は一切弱まらない。
「引っ掴んで剥がすまででしょ?」
「そうだけど、痛い!」
「森山さんが悪い」
淡々とした口調そう言われてしまえば、確かに私が悪い訳だから文句も言えない訳で。
梶木君の力に抵抗するのもそろそろ限界を迎えていた為、ムーっと口をへの字に曲げると同時に仕方なしにぽんっと彼から一歩離れた。
そんな私に向かってフッと鼻笑う梶木君。
「早くしないと終わらないよ、論文」
…………論文?
「だあぁぁぁぁぁあ!そうだった!」
梶木君の匂いに満足して、すっかり何しに図書館に来たのか忘れてた!
「じゃあね」
その言葉と共に、ひらっと手を振り踵を返して去って行く。
ま、待って!
「梶木くーん、ヘルプミー!」
空いている手を彼に向かって伸ばすも、彼の背中はどんどんと小さくなっていく。
ああ、折角梶木君に会えたから、助けて貰おうとか思ったのに……。
やっぱり自力でやるしかないって事かぁ。
一際大きな溜め息を1回吐くと、空いている席へと歩を進めた。
静かな図書館にカリカリとシャーペンを走らせる音が響く。
思いの外、遺伝の話は面白くて書く手も止まる事もない。