ぽんぽんぼん
「へー、凄いタイミング」
「だよね。もしや運命的な!?」
「な訳ないよね」
「ですね」
運命とかを信じたくなったのに、そんな気持ちはあっさりと切り捨てられる。
梶木君は運命等というロマンチックなものは信じないらしい。
ガクッと肩を落としていると、ぽんっと頭に一瞬だけ軽く乗せられた彼の手。それにドクドクと心臓が凄いスピードで脈打つと共に、カアッと顔に熱が集まってくる。
「じゃあね、森山さん」
そう言って私に背を向ける梶木君に、
「あっ、うん」
と返事をするのが精一杯だ。
それ以上の言葉を口から出そうとすると、言葉じゃなくて心臓が飛び出しそう。
梶木君の後ろ姿は、肩がガッシリしてて運動が得意って事も無いのに私なんかよりずっと大きな背中で。
男の人なんだって実感する。
私はあの人が好きなんだって心が叫んでる。
ずっと彼の背中を見ていたい衝動に駆られるが、見ていたら見ていたで段々と遠ざかって行くその姿を見て切なくなるのだろう。
くるっと踵を返して自転車の置いておいた方へと歩を進めて行く。
自転車の鍵を開けサドルに跨がった時、やっぱりこれだけ聞いておきたい!と思って後ろを振り返った。
「あのさー、梶木くーん!」
「何?」
私の大きな声に足を止めて後ろを振り返る梶木君。
それに合わせて口を開く。
「おばあちゃんって……」
が、そこで言葉を切った。