ぽんぽんぼん
いきなり中途半端な所で言葉を切った事に怪訝そうな顔をされる。
それに対して、
「ううん。やっぱ何でもない」
そう言いながら首を横にブンブンと振った。
「何それ?」
怪訝そうな顔はまだ続いている様だが、「また明日ね!」と強引に話を切り上げて手を振るという最終手段を使うと、
「はいはい。気をつけて帰りなよ」
そう言って手を振り返しながら、再び私へと背を向け歩き出す。
と、同時に私も自転車のペダルに足を乗せた。
自転車に乗りながらふぅっと息を吐く。
本当は梶木君のおばあちゃんが、昔私が迷子になった時に声を掛けてくれてぽん菓子をくれたおばあちゃんかどうか、確かめようと思ってた。
梶木君のおばあちゃんがこの辺りでは有名な夏祭りに行っていなかったかどうか。
その時、迷子の子にぽん菓子をあげたと言っていなかったか。
でも、やっぱり聞くのを止めたのは、
あの出会いが私にとって凄い心に残る出会いで。
また偶然あの人と出会うのが、良いなぁって思ったんだ。
梶木君は信じていないらしいけど、運命っていう出会いにかけてみたくなったんだ。
『いずみちゃんは知ってるかい?ぽん菓子の魔法の言葉を』
あの時の少しはにかんだ様な笑顔と共に、あのおばあちゃんから紡がれるその言葉に胸を踊らせたのは、もう随分昔の事。