彼は、魔法使い
直樹さんは、そんなあたしに向けて大きなため息を溢す。


そして、あたしの横に腰を掛けた。


「帰らないんですか?」


そんな直樹さんに、尋ねる。


「帰えるつもりだったけど、変な奴に捕まった」


捕まった、って、、、


別に、あたしは直樹さんのことを引き止めたつもりはない。


それに、始めにあたしに声を掛けてきたのは、直樹さんの方だ。


だから「捕まった」と言うより、「自ら、捕まった」と言ってほしい。


「俺はお前に、言ったはずだ。「逃げ道を作るな」と」


別に、、、


「まだ、逃げ道を作ったつもりはないんですけど」

「まだって、なんだよ」


直樹さんは呆れたように、鼻で笑う。

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