彼は、魔法使い
「芹香?」


ボーっとしていたあたしに、志麻さんが声を掛ける。


「どうかした?」

「あ、いや。あたしも早く仕事、覚えなきゃって」

「直樹さんが言ったこと、気にしてる?」


そういうわけじゃない。


ただ、今の自分の仕事をちゃんとこなしたいだけ。


「いいえ。早く仕事覚えたいって、思っただけです」

「そう?わからないことは、いつでもあたしに聞いてね」


それにあたしは、頷いた。


よし、明日も頑張ろう!!


そう、自分に言い聞かせた。


そして、あたしは志麻さんと一緒に、スタイリストやアシスタントの子たちより、先にお店を後にした。

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