アイシテルノジュモン【短篇】
彼の首に腕をまわし……爪先立ち、形のいいその唇に顔を寄せる。
応えるように顔を寄せてきた彼と口付けを交わす。
「ん……」
少しうめく彼の声。
ピクリとした震えの少し後に・……
私の口の中に広がる
鉄の風味を帯びたしょっぱい感覚
「な……んで……」
腕を解き身体を離すと、涙目で私を見上げる綺麗な顔の唇から溢れる赤が。
やけに鮮烈に見えた。
膝を折り、私の足にすがりつきながらずり落ちていくその背には。
さっきまで彼のためにフルーツを刻んでいたナイフ。
「たす……けて……アイ……シテ……ル……
アイシテ……」