私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 男性は姫川編集長の顔を見て、ぱぁっと笑顔になる。

「岳、久しぶりだね。そのモジャモジャとした髪の毛は変わんないな」
「うるせぇよ。天然だからしょうがないだろ」
「お2人はお知り合いなんですか?」
「ここ(宇ノ島)を離れる前に通っていた学校の同級生だ。とっとと取材を始めるぞ」
「はいはい」

 オーナーは姫川編集長のこうしたやり方に慣れているっぽいし、姫川編集長はうんざりとした表情でいるけれど、ここ(宇ノ島)は姫川編集長にとって生まれ育った場所だから知り合いも多いんだろうな。

 海の家の中に設置されているテーブルの1つを挟んで椅子に座り、バックから名刺とメモ帳とペンを取り出す。 
 
「本日は海の家のオープン前にお時間をいただきありがとうございます。申し遅れましたが、わたくし四つ葉出版社タウン情報部の九条麻衣と申します」

 私はオーナーに名刺を1枚渡した。

「こちらこそ宜しくお願いします。俺は高崎純で、岳とは小学校高学年まで同じクラスだった腐れ縁なんだ。連絡はちょこちょこしているけど、会うのは3年ぶりくらい?」
「お互い忙しいからな。今日は仕事で来ているから、こいつに変なことを喋んなよ」
「何だよー。そういう風に言われると話したくなるじゃないか」

 高崎さんの性格って姫川編集長にとっては真反対だけど、取材しやすいから助かるかも。

 なんか姫川編集長が遊ばれているような雰囲気は初めて見るから、ちょっと笑える。
< 112 / 161 >

この作品をシェア

pagetop