私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「岳はああいう性格だから、一緒に仕事をしていると大変でしょ?」
「原稿をチェックしてもらうたびに、小学生より下手だなって言われます」
「そうなんだ。相変わらず厳しいね」
「姫川編集長って小学生の時から厳しかったんですか?」
「そうだなぁ。親父さんが漁師だっていうのは知っている?」
「はい、前にご家族のことも話してくれました」
「親父さんと性格は似ているね。頑固だし、よく学級委員長とは揉めていたな。でも間違ったことを言っている訳じゃないから、言い方が厳しいだけで根は優しいよ」
「……その部分は分かります」

 姫川編集長のことを話す高崎さんの表情は優しくて、本当に仲が良いんだと思った。

 私もファッション部からタウン情報部に異動した初日から厳しい言い方をされていたけれど、高崎さんが言ったように間違ったことは言っていないし、タウン情報誌を作る情熱も素晴らしいし、ぶっきらぼうな態度は海斗さんと同じだけど仕事面でいつもフォローしてくれる。

 それに甘えてばかりはいけないし、せっかく季刊のメインを任されているから仕事で姫川編集長に返していきたいな。

 厨房の中に入らせてもらうと、飲食店にありそうな大きな冷蔵庫が2つとコンロが3つほどあり、料理の下ごしらえをする流し台が2つあった。

 その流し台では女性スタッフ数人が果物を洗っていて、コンロの前では男性スタッフが火力のチェックを行っていて、海の家の利用はあるけれど厨房の中ってこんなにもスタッフが大勢いるんだなぁ。

 コンロの前にいる男性スタッフたちの中に海斗さんもいて、漁師の仕事をしている時もだけど真剣に取り組んでいる海斗さんってかっこいいなぁと、仕事中だけれど不謹慎ながらドキッとする。

 それなのにこの前私は失言をして傷つけてしまったので、必ず謝ろう。
< 114 / 161 >

この作品をシェア

pagetop