私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「海斗さん、取材が終わった後でお話をしたいことがあるんですけど、お時間はありますか?」
「別にかまわない。適当に時間を潰しておく」
「ありがとうございます!出来た料理は私が運びますね」
「分かった。俺は飲み物を持っていく」

 良かった、これであの時のことを謝ることが出来る。

 一眼カメラについているネックストラップを左肩にかけて、出来た料理を姫川編集長の元へ運ぶ。

「料理が出来ました!飲み物は海斗さんが運んでくれるそうです」
「……そうか。おい、水瀬!こっちの撮影を始めるぞ」
「分かった。モデルもメイク直しが出来ているし、早速始めよう」

 姫川編集長は海の家の奥の席にモデルたちと待機していた水瀬編集長に声をかけ、スタイル抜群で可愛い水着を着ているモデルたちが用意された席につく。

「モデルたちの向かって左に刺身で、右が唐揚げだ。撮影は俺がする」
「分かりました」

 それぞれ指定された箇所に料理を置き、私は肩にかけている一眼カメラを姫川編集長に渡す。

 姫川編集長は何度も一眼カメラのレンズを覗きながら写真を撮る位置を確認していると、海斗さんが飲み物を持ってきて、それは南国をイメージした赤と黄色、海をイメージした水色の飲み物だった。

「兄貴、飲み物」
「お前から見て右のモデルから赤、水色、黄色の順番に置け」
「ああ」

 2人は視線を交わすことをしないで話をし、海斗さんは飲み物を置いて厨房の方へ行ってしまった。

「今回のページのコンセプトは水瀬から伺っていると思いますので、女子会の雰囲気でお願いできますか?」
「分かりました」
「お願いしまぁす」

 姫川編集長がカメラを構えた瞬間、モデルたちはすぐさま喋りだして、時折飲み物や唐揚げをつまみながら更に喋り続け、場の雰囲気が一気に変わるのが伝わった。

 簡単な説明だったのに一瞬にしてそれに応えられるのって、モデルさんってすごい。

 姫川編集長はモデルたちの表情を逃さないように、様々な角度から一眼カメラで撮影をしていった。
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