私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 姫川編集長の撮影は順調に進み、最後のシャッター音が鳴る。

「よし。九条、お前も画像のチェックをしろ」
「はい」

 姫川編集長から一眼カメラを借りて、側面についているボタンを押して撮影された画像を液晶画面でチェックをすると、姫川編集長がモデルたちに注文をしていた女子会の雰囲気がばっちりと撮られていて、モデルたちの表情も生き生きとしているし、やっぱり姫川編集長のカメラの腕って凄いの一言しか出てこなくて、自分との力の差を感じちゃう。

 液晶画面を見ながらもっと頑張らないとなぁ…、下唇をきゅっと噛んだ。

「お前から見て、どのカットを使いたい?」
「えっと…、モデル全員が写っているこのカットと、それと―…この海の家の中が伝わるこのカットと、食事をしているこのカットを使ってみたいです」

 季刊で掲載するならこれだろうなと思いながら、姫川編集長に応えた。

「なら、それを使え。念のため編集部のパソコンの方にもデータを送っておけ」
「分かりました。すぐ送ります」

 バックにしまっていたノートパソコンを取り出して、一眼カメラとノートパソコンをケーブルで繋いで画像を取り込み、そのままメールソフトを立ち上げて送信先アドレスに編集部のアドレスを入力し、画像を添付する機能を使って先ほど取り込んだ画像を貼りつけて送信ボタンを押した。

 編集部に戻った時にメールをチェックしてパソコン本体に画像を保存をしておけば、原稿を書くときに使えるよね。

「大体の取材と撮影は終わったな。水瀬、こっちはもう大丈夫だ」
「俺たちの方も一通り終わったから、終了って形かな」
「だな。九条、俺は純の所に挨拶をしてくるから、お前は皿を厨房に持っていけ」
「はい」

 姫川編集長から今回の取材と撮影の終了と言う合図で周りはホッとした雰囲気になり、姫川編集長は海の家を出て行き、今なら海斗さんと話をするチャンスかも!!

 撮影で使ったお皿と飲み物が入っているグラスを手に持って厨房へ向かうと、スタッフたちが居て海斗さんの姿は無い。

 何処かに行っているのかな?それより、先にお皿を洗うのが先だよね。
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