私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「あの、使わせていただいたお皿を洗いたいので流し台をお借りします」
「どうぞー」

 スタッフの許可を貰い、私は流し台に行き、洗剤とスポンジを使ってお皿とグラスを洗っていると、何処かに行っていた海斗さんが私の隣に並んで泡が付いているお皿とグラスを濯いだ。

「海斗さん、ありがとうございます」
「別に」

 ぶっきらぼうな言い方だけど、海斗さんの優しさが嬉しくて口元が綻んだ。

 布巾でお皿とグラスに着いた水滴を拭いて、水切りかごにそれを置いた。

「料理を作っていただいてありがとうございました。撮影も無事に終わりました!」
「それならいい」
「あの…、少しだけお話をしても良いですか?」
「あそこのドアを出たところでいいか?」
「はい」

 海斗さんに連れられてドアから出ると海の家の裏手に出たので、これなら誰にも邪魔されないですむかも

「で、話しって何だ?」
「えっと…」

 ちゃんと謝るんだって決めたんだから、頑張れわたし。

「この間、宇ノ島駅前でのことです。あの時、私の無神経な言葉で傷つけてしまってごめんなさい」

 深く深く頭を下げて、この間の失言のことを謝った。

 海斗さんが何を言ってきてもこれは私の失言のせいだから、耐えなくちゃ。
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