私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「九条、帰るぞ」
姫川編集長の声にパチっと瞼を開け、海斗さんの手を包んでいた手をパッと離すと、海斗さんも私の頬に添えていた手を離した。
そして声がした方向に顔を向けると、かなり怒った表情でいる姫川編集長が立っていて、あぁ…これは2人きりでいたところを絶対に見ていたよね。
「帰るから、さっさとしろよ」
「は、はい。海斗さん、また取材にきます」
姫川編集長は踵を返して歩きだし、海斗さんに慌ただしく挨拶をして、先に歩いて行ってしまった姫川編集長の元に走っていった。
海の家から離れて路上を歩いていると、前を歩く姫川編集長が振り向く。
「お前、この企画から外れろ。俺らは何しにここに来ているのか分かってんのか?」
「……」
圧倒されて何も言えなくなってしまうのは、姫川編集長が言っていることが正しいから。
高坂専務が社運をかけて発行を決めた季刊を完成させるために取材に来ているのに、私は最後の最後で自分のことを優先しまって海斗さんといたからだ。
申し訳ございませんって言えば済む問題じゃないし、でもどう言葉を言えばいいのかそれが出ない。
「それとあいつは…、海斗はやめとけ」
「どうしてですか?何故姫川編集長にそんなことを言われなくちゃいけないんですか?」
いくら兄弟だからって、やめとけって理由がよく分からない。
「あ~、くそっ…」
姫川編集長は苛つきながらもじゃもじゃの髪の毛をガシガシ掻き、私のところに近づいて両肩を掴んだと思ったら、ぐいっと体を引き寄せた。
「姫かー…んっ…」
言葉はそれ以上、続かなかった。
姫川編集長の声にパチっと瞼を開け、海斗さんの手を包んでいた手をパッと離すと、海斗さんも私の頬に添えていた手を離した。
そして声がした方向に顔を向けると、かなり怒った表情でいる姫川編集長が立っていて、あぁ…これは2人きりでいたところを絶対に見ていたよね。
「帰るから、さっさとしろよ」
「は、はい。海斗さん、また取材にきます」
姫川編集長は踵を返して歩きだし、海斗さんに慌ただしく挨拶をして、先に歩いて行ってしまった姫川編集長の元に走っていった。
海の家から離れて路上を歩いていると、前を歩く姫川編集長が振り向く。
「お前、この企画から外れろ。俺らは何しにここに来ているのか分かってんのか?」
「……」
圧倒されて何も言えなくなってしまうのは、姫川編集長が言っていることが正しいから。
高坂専務が社運をかけて発行を決めた季刊を完成させるために取材に来ているのに、私は最後の最後で自分のことを優先しまって海斗さんといたからだ。
申し訳ございませんって言えば済む問題じゃないし、でもどう言葉を言えばいいのかそれが出ない。
「それとあいつは…、海斗はやめとけ」
「どうしてですか?何故姫川編集長にそんなことを言われなくちゃいけないんですか?」
いくら兄弟だからって、やめとけって理由がよく分からない。
「あ~、くそっ…」
姫川編集長は苛つきながらもじゃもじゃの髪の毛をガシガシ掻き、私のところに近づいて両肩を掴んだと思ったら、ぐいっと体を引き寄せた。
「姫かー…んっ…」
言葉はそれ以上、続かなかった。