私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
気をとりなおして街歩きを続けると、以前自分が気に入って姫川編集長にも提案した路地裏に来た。
雑貨屋さんの前には小さなワゴンがあり、そこでは大小様々な風鈴が販売されていて、金魚鉢みたいな形の風鈴には小さな金魚のイラストが、市松模様やボーダー柄などもある。
風に揺られるたび、綺麗な音色が耳を刺激するなぁ。
音色を堪能していると雑貨屋の中からエプロンを着た女性が出てきて、ワゴンの側に立った。
「観光ですか?」
「いえ…、仕事でこの街を歩いてます」
私は鞄から名刺を取り出して、女性に渡した。
「あの、少しだけお話を伺ってもいいですか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
メモ帳とペンを用意して、雑貨屋の前でインタビューをすることにした。
「先ずはこの雑貨屋を始めた経緯ですが―…」
時に雑談も交えながらインタビューを続けていると、女性は私の背後に視線を動かして、花が咲いたようにぱぁっと笑顔になった。
「旦那が帰ってきた。おーい」
女性が大きく手を振ったので振り返ると、無精ひげを生やした男性がこちらに歩いてきて、手には白いビニールの袋を持っている。
「恥ずかしいから大声だすな」
「いいじゃない、久しぶりに帰ってきたのにその言い方はないんじゃない?」
「だから、旨い魚をもってきたから何か作ってくれよ」
「はいはい、冷蔵庫に入れておいてちょうだい」
男性はやれやれという感じで、お店の中に入っていった。
「旦那さん、久しぶりに帰ってきたんですか?」
「そーなのよ、漁師だから4日ぶりに会ったかしら?」
この人の旦那さん、漁師なんだ…。
海斗さんのことが、ふと頭に浮かんだ。
『最初は物珍しそうにするけど、結局は寂しいとか言って離れていくんだ』
海斗さんに言われたこの言葉は、今でも胸に深く突き刺さっている。
雑貨屋さんの前には小さなワゴンがあり、そこでは大小様々な風鈴が販売されていて、金魚鉢みたいな形の風鈴には小さな金魚のイラストが、市松模様やボーダー柄などもある。
風に揺られるたび、綺麗な音色が耳を刺激するなぁ。
音色を堪能していると雑貨屋の中からエプロンを着た女性が出てきて、ワゴンの側に立った。
「観光ですか?」
「いえ…、仕事でこの街を歩いてます」
私は鞄から名刺を取り出して、女性に渡した。
「あの、少しだけお話を伺ってもいいですか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
メモ帳とペンを用意して、雑貨屋の前でインタビューをすることにした。
「先ずはこの雑貨屋を始めた経緯ですが―…」
時に雑談も交えながらインタビューを続けていると、女性は私の背後に視線を動かして、花が咲いたようにぱぁっと笑顔になった。
「旦那が帰ってきた。おーい」
女性が大きく手を振ったので振り返ると、無精ひげを生やした男性がこちらに歩いてきて、手には白いビニールの袋を持っている。
「恥ずかしいから大声だすな」
「いいじゃない、久しぶりに帰ってきたのにその言い方はないんじゃない?」
「だから、旨い魚をもってきたから何か作ってくれよ」
「はいはい、冷蔵庫に入れておいてちょうだい」
男性はやれやれという感じで、お店の中に入っていった。
「旦那さん、久しぶりに帰ってきたんですか?」
「そーなのよ、漁師だから4日ぶりに会ったかしら?」
この人の旦那さん、漁師なんだ…。
海斗さんのことが、ふと頭に浮かんだ。
『最初は物珍しそうにするけど、結局は寂しいとか言って離れていくんだ』
海斗さんに言われたこの言葉は、今でも胸に深く突き刺さっている。