私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
茜の合コンに誘われた数日後、四つ葉出版のフロアに1本の電話が掛かってきて、それは姫川編集長の机の上にある電話機だった。

「はい、四つ葉出版社の姫川です。ええ、はい…」

どんな内容だろ?姫川編集長は長い時間、電話をしている。

「ありがとうございます。高坂にも伝えます、はい、失礼します」

姫川編集長は受話器を置いて、深く深呼吸をした。

「やっとか…、皆よく聞け!青木印刷所から電話がきた。季刊の印刷が完成したぞ!!」

姫川編集長がフロア内に聞こえるように叫ぶと、皆の顔が一気に笑顔になり、出来たんだ!ついに季刊が出来たんだ!!と嬉しい。

「高坂に連絡してくる」
「はい」

姫川編集長がスマホを持ってフロアを出ていくと、ファッション部にいるメンバーたちが私のところにきた。

「麻衣、お疲れさま~」
「うん、お疲れ~」
「ねぇ、お疲れ様のお祝いに飲みに行かない?」
「いーね、ビールとか飲みたいな」
「麻衣、おっさんみたい」
「いーもん、疲れた時に最適じゃん」

自分達が作った本が出版されるんだと思うと、私は喜びを我慢せずに皆と盛り上がった。

私とファッション部のメンバーたちはお疲れ様会をしようと、計画を立ててみる。

姫川編集長もどうかな?私はフロアを出て姫川編集長を探すと、姫川編集長は廊下の端でまだ電話をしていた。

「ああ、頼むな。それじゃ、お疲れ」

姫川編集長は通話を終えてスマホをシャツのポケットにしまったから、声をかけてみよう。

「夜にお疲れ様会をしようと思うんですが、どうでしょうか?」
「悪い、これから行くところがあるから」
「どちらにですか?」
「まぁ、ちょっとな…」

何だか姫川編集長は口ごもって、行き先を言わないでいる。

「俺のことはいいから。よく頑張った」

姫川編集長は片手を上げて、階段を降りていく。

一体何処に出掛けるんだろう?

そしてその日のお疲れ様会では大いに盛り上がり、私は久しぶりに飲むビールに酔っぱらい、心地よい眠りに着いた。
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