私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
私は海斗さんの手に引かれながら街を歩くけど、周囲の視線と声が痛い。
「ねぇ…」
「あまり見ちゃ駄目だよ」
は、恥ずかしい。
でも仕方ないよね、全身ずぶ濡れで靴はビーチサンダルで、着替えも持たずにここまできたし、自分から海に落ちたし、自業自得だ……。
「もうすぐ家につく。婆ちゃんが着替えを用意してくれるって」
「何から何まですいません…」
「あんたが無事なら、これくらい平気だ」
「ありがとうございます」
海斗さんはギュッと手を握るから、恥ずかしさも気にしないでいられる。
「今日って、人が多いですね」
「花火大会があって、それで混む」
そっか、海の家のオーナーも花火大会があるって言ってたな、だからこんなに混雑してるんだ。
しばらくして佐々原家に到着し、海斗さんは私の手を引いて中に入った。
「婆ちゃん、帰った」
家の奥からパタパタと足音が聞こえ、ヒデ子婆ちゃんが来た。
「ヒデ子婆ちゃん、突然すいません」
「あれまぁ、ずぶ濡れじゃない。ほら、先にお風呂に入りなさい。勿論、麻衣ちゃんが先よ。海斗は覗いちゃ駄目だからね」
「しないし。したら、婆ちゃんの左手がくるからしないよ」
ヒデ子婆ちゃん、結構怒ると恐いんだ。
「あんた、入れよ」
「お言葉に甘えて、お先にいただきます」
私は佐々原家にあがり、お風呂を使わせてもらった。
海水で全身ベトベトしていたから、お風呂で洗い流すことができて良かったなぁ。
脱衣場でタオルで身体を拭いてると、ドアがガラッと開いてヒデ子婆ちゃんが入ってきた。
「麻衣ちゃん、着替えはこれを使ってね」
ヒデ子婆ちゃんの手には白地にピンクの花びらの刺繍がされている浴衣と、朱色の帯があった。
「義理の娘…、孫たちの母親のだけど麻衣ちゃんなら似合うわ」
海斗さんのお母さんが来ていた浴衣…、こんなにも大切な浴衣を私に着せてくれるんだ。
「ありがとうございます」
「着付けてあげる」
ヒデ子婆ちゃんに浴衣を着付けて貰う。
「とても似合うわ」
「そうですか?」
「ほんと…似合ってるわ」
ヒデ子婆ちゃんは涙を流し、しわしわな手で私の手を握る。
「麻衣ちゃん、海斗の傍にいてちょうだい。あの子、麻衣ちゃんが来てからちょっとづつ笑ったり、小さい頃の話をするようになったの。小さい頃から辛い思いばかりだったけど、もう自分の幸せを考えて欲しいと思うの。麻衣ちゃん、海斗と幸せになって」
「…はい、幸せになります」
ヒデ子婆ちゃんと一緒に涙を流しながら、手を握りあう。
「婆ちゃん、もう風呂に入りたいんだけど」
「分かったわ、せっかちね」
ドア越しに海斗さんの声がして、ヒデ子婆ちゃんはタオルで涙を拭いて返事をする。
海斗さんが皆に愛されてるのを知れて、私は幸せを噛み締めていた。
「ねぇ…」
「あまり見ちゃ駄目だよ」
は、恥ずかしい。
でも仕方ないよね、全身ずぶ濡れで靴はビーチサンダルで、着替えも持たずにここまできたし、自分から海に落ちたし、自業自得だ……。
「もうすぐ家につく。婆ちゃんが着替えを用意してくれるって」
「何から何まですいません…」
「あんたが無事なら、これくらい平気だ」
「ありがとうございます」
海斗さんはギュッと手を握るから、恥ずかしさも気にしないでいられる。
「今日って、人が多いですね」
「花火大会があって、それで混む」
そっか、海の家のオーナーも花火大会があるって言ってたな、だからこんなに混雑してるんだ。
しばらくして佐々原家に到着し、海斗さんは私の手を引いて中に入った。
「婆ちゃん、帰った」
家の奥からパタパタと足音が聞こえ、ヒデ子婆ちゃんが来た。
「ヒデ子婆ちゃん、突然すいません」
「あれまぁ、ずぶ濡れじゃない。ほら、先にお風呂に入りなさい。勿論、麻衣ちゃんが先よ。海斗は覗いちゃ駄目だからね」
「しないし。したら、婆ちゃんの左手がくるからしないよ」
ヒデ子婆ちゃん、結構怒ると恐いんだ。
「あんた、入れよ」
「お言葉に甘えて、お先にいただきます」
私は佐々原家にあがり、お風呂を使わせてもらった。
海水で全身ベトベトしていたから、お風呂で洗い流すことができて良かったなぁ。
脱衣場でタオルで身体を拭いてると、ドアがガラッと開いてヒデ子婆ちゃんが入ってきた。
「麻衣ちゃん、着替えはこれを使ってね」
ヒデ子婆ちゃんの手には白地にピンクの花びらの刺繍がされている浴衣と、朱色の帯があった。
「義理の娘…、孫たちの母親のだけど麻衣ちゃんなら似合うわ」
海斗さんのお母さんが来ていた浴衣…、こんなにも大切な浴衣を私に着せてくれるんだ。
「ありがとうございます」
「着付けてあげる」
ヒデ子婆ちゃんに浴衣を着付けて貰う。
「とても似合うわ」
「そうですか?」
「ほんと…似合ってるわ」
ヒデ子婆ちゃんは涙を流し、しわしわな手で私の手を握る。
「麻衣ちゃん、海斗の傍にいてちょうだい。あの子、麻衣ちゃんが来てからちょっとづつ笑ったり、小さい頃の話をするようになったの。小さい頃から辛い思いばかりだったけど、もう自分の幸せを考えて欲しいと思うの。麻衣ちゃん、海斗と幸せになって」
「…はい、幸せになります」
ヒデ子婆ちゃんと一緒に涙を流しながら、手を握りあう。
「婆ちゃん、もう風呂に入りたいんだけど」
「分かったわ、せっかちね」
ドア越しに海斗さんの声がして、ヒデ子婆ちゃんはタオルで涙を拭いて返事をする。
海斗さんが皆に愛されてるのを知れて、私は幸せを噛み締めていた。