私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「やり直し」
「はい…」
記憶が鮮明な内にと文字お越しをして早速原稿を書いて姫川編集長へ提出するも、姫川編集長は数秒読むだけで突き返してくる。
これで何度めの突き返しだろうか、とぼとぼと席に戻って眉間のしわを深く寄せながら原稿に視線を落とした。
『静かな住宅街にある一軒の定食屋【もりや】はメニューの数は少ないものの―――』
ファッション雑誌『Clover』の原稿だと洋服の特徴を事細かに書けるけど、街の魅力を伝えるのって難しいしな。
私はみみずがくったくような字で満載のメモ帳を読み返してもう一度記事を書き直す作業を始めていると、タウン情報部の所に水瀬編集長が来た。
「俺のスマホに仁が取引先との会食にお勧めな店は無いかって、連絡が来たよ」
「荒木の奴…、編集長のくせに全然こっち(四つ葉)に顔を出さずに会食かよ」
2人の会話に出てきた荒木仁(あらきじん)という人はスポーツ部が発行する雑誌『Scoperta』の編集長のことだけど、同じフロアにいる筈なのにあまり見たことがない。
荒木編集長があまりにも姿を見せないので、一部の社員からは"ツチノコ"だと呼ぶ人もいる。
「しょうがねぇな、ちょっと荒木に連絡してくる」
姫川編集長は渋々という表情で立ちあがり、フロアを出て行った。
「水瀬編集長、ファッション部に戻りたいです。しかもタウン情報部が私と姫川編集長との2人きりだなんて、説明されてないです」
「ちゃんと話をしてなくてごめんね。姫川は口調はきついけれど、上手くやっていけるよ」
私は姫川編集長が居ない隙にと思って、水瀬編集長に元の部署に戻りたいと懇願する。
他にもメンバーがいたら相談とかできるけれど私1人だし、何度も原稿を突き返されるから、私はタウン情報には合ってないんだって思うのは自然だもの。
「とにかく仲良くね!」
「そんなぁ」
元に戻れると思ったんだけど、水瀬編集長はそれじゃあと手を振ってタウン情報部から立ち去っていった。
「はい…」
記憶が鮮明な内にと文字お越しをして早速原稿を書いて姫川編集長へ提出するも、姫川編集長は数秒読むだけで突き返してくる。
これで何度めの突き返しだろうか、とぼとぼと席に戻って眉間のしわを深く寄せながら原稿に視線を落とした。
『静かな住宅街にある一軒の定食屋【もりや】はメニューの数は少ないものの―――』
ファッション雑誌『Clover』の原稿だと洋服の特徴を事細かに書けるけど、街の魅力を伝えるのって難しいしな。
私はみみずがくったくような字で満載のメモ帳を読み返してもう一度記事を書き直す作業を始めていると、タウン情報部の所に水瀬編集長が来た。
「俺のスマホに仁が取引先との会食にお勧めな店は無いかって、連絡が来たよ」
「荒木の奴…、編集長のくせに全然こっち(四つ葉)に顔を出さずに会食かよ」
2人の会話に出てきた荒木仁(あらきじん)という人はスポーツ部が発行する雑誌『Scoperta』の編集長のことだけど、同じフロアにいる筈なのにあまり見たことがない。
荒木編集長があまりにも姿を見せないので、一部の社員からは"ツチノコ"だと呼ぶ人もいる。
「しょうがねぇな、ちょっと荒木に連絡してくる」
姫川編集長は渋々という表情で立ちあがり、フロアを出て行った。
「水瀬編集長、ファッション部に戻りたいです。しかもタウン情報部が私と姫川編集長との2人きりだなんて、説明されてないです」
「ちゃんと話をしてなくてごめんね。姫川は口調はきついけれど、上手くやっていけるよ」
私は姫川編集長が居ない隙にと思って、水瀬編集長に元の部署に戻りたいと懇願する。
他にもメンバーがいたら相談とかできるけれど私1人だし、何度も原稿を突き返されるから、私はタウン情報には合ってないんだって思うのは自然だもの。
「とにかく仲良くね!」
「そんなぁ」
元に戻れると思ったんだけど、水瀬編集長はそれじゃあと手を振ってタウン情報部から立ち去っていった。