私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 私がタウン情報部に異動して2週間が過ぎ、現在は再来月号の『Focus』に掲載する原稿を作成しており、相変わらず姫川編集長はきつい言い方でダメ出しのオンパレードをする。

「まだ文章がなってない。感想文を書いてどうすんだ、今の小学生だって上手く書くぞ」
「すいません……」
「俺たちは街の魅力を伝えるんだって言っただろ?」
「はい…」

 私は突き返された原稿に視線を落とし、姫川編集長の指示通りで作るのと私が考えて作る原稿の内容は雲泥の差を感じてしまう。

 そりゃ経験の差って言われるのは分かっているけれど、こうもダメ出しが続くとやっていく自信というものが…。  

「もう一度やり直し。それと来月発売される見本誌が出来上がる頃だが、印刷所からの連絡は?」
「明日にはこちらに送るそうです」
「そうか」

 明日届く見本誌は私も取材に同行した【もりや】が掲載されるので、どんな風に出来上がっているのかとても楽しみだ。

 私は気を取り直してパソコンのキーボードを打ち始め、姫川編集長は机の上に置いてある電話機の受話器を持ち上げて何処かへ電話をかける。

「お世話になります、四つ葉出版社の姫川です。実は―……」

 すると自分の机の上に置いていたスマホが振動したので手に取ると、画面にはメールを受信したマークが表示されていたので、指でタップして本文を開いた。

『麻衣~、今夜飲みに行かない?オススメのBarがあるんだ♪茜』

 茜は大学生時代の同級生で、今は首都圏を中心に展開する角井百貨店の受付嬢をしていて、たまに女子会をしながらストレス発散をする仲だ。

 そういえば私がタウン情報部に異動になってから茜とは飲みに行ってないから、早速OKしようっと。

 私は茜に返事を送り、うきうきしながら仕事に取りかかった。
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