私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「まだまだだなぁ」

 私は厳しい意見に下唇をキュッと咬みながら感想アンケートを読み続けると、一人の読者からの感想アンケートに目がとまり、そこにはこう書かれている。

『彼は職業が弁護士で普段はスーツ姿だけど、休日はカジュアルなんです。私もカジュアルが好きだから、Cloverのコーディネートを参考にしてデートに行ったら、彼がとても喜んでくれました。次もCloverを買います』

 読者の嬉しい気持ちが私にも伝わってきて、自然と頬が緩んだ。

 確かに中には厳しい意見もあるけれど、頑張って考えたコーディネートで恋人と仲良くなれたと言われると、こっちまでハッピーな気持ちになる。

 どうしよう、ニヤニヤが止まらない。

 きっと周りからは変な目でうつっているかもしれないけど、嬉しいものは嬉しいんだもん。

「ニヤニヤしすぎ」
「嬉しいものは嬉しいんですよ」

 私はニヤニヤとしながら感想アンケートを読んでいると、水瀬編集長はやや呆れ声になっていた。

「まー、膨大な数の企画書の作成の宿題を頑張っていたし、次も読者からの良い感想をもらえるように頑張ってね」
「勿論です!」
「頼んだよ」

 私は水瀬編集長にガッツポーズをすると、水瀬編集長は自分の席へと戻る。

 そして私も体を前に向きなおして再び作業に戻ると、キーボードを打つ手はいつもより軽やかに動くのを感じた。
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