私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 私は次回発行の雑誌で使用する写真を選ぶため、デスクトップの画面にある1つのフォルダを選んだ。

 ここにはカメラマンがモデルを撮影したスナップ写真や、洋服単体で写した物などが収められている。

 私は先月号の読者からの感想アンケートを反映しようと、モデルが着ている洋服のコーディネートの写真を一枚一枚じっくり見比べた。

 私たちが推すものとギャップがないか、20代前半の女子はふんわりとした印象の洋服を好むけれど、26歳からだと仕事もキャリアを重ねるから洋服はキッチリとしたのを重視させるか、それともカジュアルな部分を取り入れてみせるとか、読者が何を求めてるか考える。

「あー、このモデルって今度結婚するって話題の人だよね」

 私の隣の席で同じようにパソコンで仕事をしている同僚の女子が、私が使っているパソコンに映し出されているモデルをみながら言った。

「しかも相手の男性って、アパレル会社の社長らしいよ。いいなぁ、私もスポーツ選手と結婚したい」

 同僚の女子は、心底羨ましそうに言う。

 社長やスポーツ選手かぁ…、私も好きになる相手の職業に注目しちゃうのはあって、次に恋をするのであれば一体どんな職業をしている男性に出会うんだろうかと考えた。

 元彼のように夢追い人?それとも女子に人気な職業Best10に入っているように、弁護士等のステータスが高い職業の人?もしくは四つ葉出版社にいる社員…とか?

 私はちらりとフロアを見渡し、ここのフロア内にいる男性社員は年齢的に自分に近い人もいれば、やや年上の人ばかりだ。

 あー、もし社内恋愛してたら周りにバレた時になんて言われるか!

 こんな小さなビルだし、瞬く間に広まるし!

「ていうか、仕事しなきゃ」

 締め切りもあるのだから、今は仕事に集中、集中と気持ちを切り替えるために顔を左右にふる。

「副編集長、これから会議に行くから暫らく席を外すね」
「分かりました」

 水瀬編集長はファッション部の副編集長に声をかけ、書類の束とスマホを手に持って席を立ちあがってフロアを出て行った。
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