私が恋した男(旧題：ナツコイ～海男と都会男～)

　水瀬編集長が会議に参加をして数時間が過ぎ、私は未だパソコンの画面を見て写真を選び続けている。

　これだ！という写真が決まらなく、原稿の提出期限まで間に合うかな。

　するとフロアのドアが開き、水瀬編集長がやや困った表情をしながら入ってきた。

「水瀬編集長、お疲れ様でした。会議は長かったですね」
「ああ…、うん、まぁ…」

　水瀬編集長は何故か歯切れが悪いような感じで返事をしたので、私の頭に疑問符の？マークが浮かんだ。

　何だか水瀬編集長、様子がおかしいというか、そわそわしてるような気がする。

「九条、ちょっと一緒に廊下に来てもらってもいいかな？」
「はい」

　水瀬編集長は廊下を指さす仕草をし、私はパソコンの電源を落として水瀬編集長と一緒に廊下に出る。

　一体何なんだろう…、締め切りはまだ先で原稿を仕上げるスケジュールは守ってるし、あっ、この前コーヒーを出す時に砂糖をつけ忘れてたっけ。

　私は心当たりを思いつく限り頭の中であげていくけど、思い当たらない。

　２階のフロアの廊下を歩いて行き止まりまでくると向き合うように立ち、水瀬編集長は一旦ふぅっとため息をついて口を開く。

「実はさ…、さっきの会議で人事異動が決まってさ」
「異動ですか？」

　人事異動って、何で急に？とまた疑問符が浮かぶ。

「うん。あのさ九条、突然だけど今回の人事異動で君がファッション部からタウン情報を手掛ける部署に異動となった」
「え゛えぇぇー？！」

　私の絶叫が２階の廊下に響き、何で急に異動が決まるの？まだ次回発行の雑誌を手掛けているのに！と頭の中が混乱する。