俺の妹が可愛すぎて。
「……座ってるだけでも出来ることあるでしょ?」
風馬の言うとおり、相変わらず無表情な透子は俺にあるものを差し出す。
「………?……メガホン?」
「……グラウンドにいなくたって、ユキはメンバーなんだから。一生懸命、メンバーを支えて応援すること」
無表情のまま手渡されたメガホンと、透子の言葉に思わず笑みが零れた。
「……何がおかしいの?」
「いや(笑)サンキュー、透子」
そっか……自分のこの現状に悲観してる場合じゃない。
グラウンドにいなくたって、俺もメンバーの一人なんだな……
透子の言葉が素直に心に染みて、さっきまでケガをした自分に悲観していたことがバカらしく思えて笑ってしまった。
試合は順調に進んでいた。
俺はベンチから大声でメンバーを支え応援し、透子はハーフタイムの為に部員の水を準備し、優花は俺の隣で応援しながら、まだ慣れないスコア記録表をつけていた。
「ねぇ、ユキちゃん…ここ、書き方教えて?」
優花が悩んでいるのは、さっき風馬が得点を決めた構図を書くのに悩んでいた。
「あぁ、これは〜10番がドリブルで波線。10番から9番にゴロパスで直線矢印で
、9番からヘディングシュートな。ヘディングはHで表記」
「ふんふん、わかった!」
そう言って、一生懸命書く優花がなんだか可愛くて思わず笑ってしまう。
「もう、なんで笑うの〜?」
「いや(笑)一生懸命マネージャーしてんなって思って。」
優花は「もう、一生懸命やってるのに笑うなんてヒドイ」と言うが、俺はそんな優花が可愛くて笑っていた。
でも、もちろんそんなこと素直に言えない。
そう優花を笑っていると、透子がじっとこっちを見ているのに気づいた。
「な、なんだよ。んな、怖い顔で見んなよ」
そう言うと、透子は相変わらずの無表情で「…別に」と呟いて、またハーフタイム用のタオルを用意していた。
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