俺の妹が可愛すぎて。


「………あたし、絶叫系キライ」


透子の無表情で呟いた言葉に、俺が無理やりあげたテンションは撃沈される。


絶叫系が多いこの遊園地。

絶叫系でスカッとしたいこの気持ちを、コーヒーカップやメリーゴーランドで癒せと言うのか。

いや、それは難しい……。


そう心ん中で呟いていたら、透子がある場所を指を指す。


「………あそこなら、いいけど」

「……は?マジ?透子、ああいうの好きなの?」

「……うん、割と」

「……ある意味、絶叫系じゃね?」


そう苦笑いし、透子がスタスタそこへ歩いていくもんだから、俺は透子の後を追う。


透子が行きたがったのは、お化け屋敷。


正直、俺はあんま得意じゃない。


どんよりとしていた気持ちは、中に入ることで余計どんよりとする。


「……なぁ、暗すぎねぇ?ってか、なんも見えねぇし」

「……そう?真っ暗で落ち着く」


真っ暗でずっと怖い音が流れてるこの空間を落ち着くと言う透子が意味わかんない。


だけど……

並んで歩いて入っていって、初めは俺と透子の間に距離があったのに、暗闇が深くなるにつれてしだいに近くなる。


そして、俺は気づいてしまった。


透子が俺の裾を握っていることに。


「………なぁ、怖ぇの?透子」

「……い、いや……こ、こ、怖くない…」

「……めっちゃビビってんじゃん」


透子も普段は澄ましてるくせして、こういう時は女の子なんじゃんと新たな透子を見つけてしまった。


「わっ……」


透子が低い声で驚く。

その透子の反応に笑いそうになったが、お化け屋敷に似つかわしくないので堪えていたら……


「わぁ〜っ!」

「ぎゃあっ!!」


後ろからお化けが追いかけてきて、二人で大声で叫ぶ。


「透子、逃げんぞ!」


そう言って透子の手をとり、ダッシュでお化け屋敷から出た。




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